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血のつながりにこだわらず子どもを育てたい〜特別養子縁組について伺いました

第8回 2021/12/26放送
瀬奈じゅんさん

〜スペシャルインタビュー:産科婦人科舘出張 佐藤病院院長 佐藤 雄一さん〜

中村:みなさんは「特別養子縁組」という制度をご存じでしょうか。
これは児童福祉の観点から生みの親による養育が著しく困難、もしくは不適当でなおかつ子どもの利益のために必要だと家庭裁判所が判断した場合に、子どもと生みの親との法的な親子関係を解消して、新たに育ての親と法的親子関係を結ぶ制度です。
今日はこの制度を活用してお子さんを迎えられた、元宝塚歌劇団月組トップスターで俳優の瀬奈じゅんさんをゲストにお招きしています。

瀬奈さんがお子さんのことを考え始めたのは、2012年に結婚されたあたりからでしょうか?

結婚してから妊活をすぐに始められなかった理由

瀬奈:いえ、お付き合いしているときからずっと「子どもが欲しいね」っていう話はしていました。
ただ結婚したときはすでに3年先の舞台の仕事が決まっていたので、妊活に取り組むのが遅くなってしまって。40歳ぐらいで妊活を始めました。

 

中村:仕事を全部きちんとこなしたいという思いがあったんですね。

 

瀬奈:そうです。お受けした以上は責任を持って誠実に対応していきたいなと思っていたので。

 

中村:妊活する上で年齢的に不安になることはありましたか?

 

瀬奈:そのころの私は本当に無知だったので「努力すれば授からないことはない」って思っていました。でも、がんばってもかなわないこともあるんだって知って。妊活は私にとって生まれてはじめての挫折でしたね。

 

中村:当時、旦那様とはどんなお話をされていましたか?

妊活する中で夫から養子縁組を提案されたとき

瀬奈:主人は子どもが好きでチャイルドマインダーという、いわゆるベビーシッターの資格も持っています。
彼も私も子どもを望んでいたので不妊治療をしていました。でも、ホルモン注射や飲み薬を繰り返すことで体も心もボロボロになってしまって。そんな私の様子を見るに見かねた主人が、「自分は子どもとの血のつながりにはこだわらないよ」って話をしてきたんです。

※イギリス発祥の家庭的少数保育のスペシャリスト。保育ニーズの多様化・施設や人材が不足する中注目される。保育ママ(少人数家庭的保育サービス)と同等の保育を提供する民間資格。

 

中村:瀬奈さんの姿を見てそう話されたんですね。

 

瀬奈:はい。そのときは「あなたとの子どもが欲しくて私はがんばってるのに、何言ってるんだろう?」と思ったんですけど、信頼している主人が間違ったことを言うはずはないということはわかっていました。
この言葉をきっかけに、子どもが欲しいのか子どもを育てたいのか、どっちなのか考えるようになって。それでただ単に子どもが欲しいわけじゃなくて、「子どもを育てて温かい家庭を作りたい」と思っていたことに気づかされました。

 

中村:不妊治療はどれぐらいの期間だったんですか?

 

瀬奈:2年半くらい不妊治療をしてその間に7回ほど体外受精をしました。
かなりハードな内容だったんですが、私はやるからには徹底してやるタイプだったのでやめどきも難しくって。
諦めるっていうことが挫折のように思えてしまって。すごく難しい選択でした。

 

中村:ここで不妊治療に関して専門の先生にお話を伺っています。一緒に見ていきましょう。

食事と運動を基本に〜ライフスタイルや年代で変わる女性の体のケア

〜スペシャルインタビュー:産科婦人科舘出張 佐藤病院院長 佐藤 雄一さん〜

佐藤先生

中村:瀬名さんはとてもおきれいでいらっしゃいますけれど、やはり食事に関しては普段から気にされていますか?

妊活中の体と心のケアについて

瀬奈:ずっと気にしてますし、今も気にしています。

 

中村:妊活中も、もちろん食事には気を使われたのでしょうか?

 

瀬奈:特に妊活中は、ホルモン剤を飲んだことによって今よりも13キロぐらい太ってしまって。ちょっと食べたらすぐに太るので、お野菜を多めにとるとか、たんぱく質をとるために蒸し鶏を食べるとか気をつけていました。
妊活をやめて舞台復帰するときにがんばってトレーニングして戻しましたね。

 

中村:体のケアはプロフェッショナルでいらっしゃいますが、2年半にわたる妊活中の心のケアはいかがでしたか?

 

瀬奈:主人が本当によくサポートしてくれていたので、ギリギリのところを保っていたんじゃないかなと思いますね。

 

中村:「旦那様の子どもが欲しい」と思っていた瀬奈さんが養子を考え始めたのは、どういった気持ちの変化があったからでしょうか?

特別養子縁組に前向きになったきっかけ

瀬奈:主人に養子の話をされたあと、自分でも調べてみたんです。
「養子縁組」とは言っても、特別養子縁組、普通養子縁組、里親制度など、子どもを受け入れるいろいろな制度があることを学びました。
そして年間に何千人という小さいお子さんが、児童養護施設に行かなければならないという現実を知ったときに、「私になにかできることないかな」、「ひとりでも温かい家庭で育つことができたらすてきだな」って思い始めて。自分は「子どもを産みたいわけじゃなく育てたいんだ」というところに行きつきました。
そして主人から養子縁組のことを提案された半年後に、「私も前向きに考えてみようと思う」と伝えたら、主人はすごく喜んでいました。

 

中村:海外では子連れで再婚したステップファミリーや養子を迎えるなど、血のつながりがない親子がよくみられます。
日本ではまだ、隠したりマイナスにとらえたりする傾向がありますよね。そういう中で特別養子縁組を組むということに関して、不安や心配はありませんでしたか?

 

瀬奈:一番悩んだのは、「子どもを育てたいからといって特別養子縁組で子どもを迎えるのは、私たちのエゴなんじゃないか?」ということです。
家族は大賛成してくれていましたし、私たちの思いや、育てるための体制に不安はなかったんですけど。ただ、決断するのに本当に勇気はいりましたね。

 

中村:周りの方々がサポートしてくれるのはかなり心強いですね。
迎え入れるまでにもいろいろと大変だったと思うんですけれども、2017年に男の子を迎えられたときの気持ちを教えてください。

子どもを迎えた日のこと

瀬奈:息子は生まれてからミルクをうまく飲むことができなかったようで、ミルクの飲ませ方をレクチャーしてもらうために、その日は早めに迎えに行ったんです。
はじめて抱っこしたとき、「いける気がする」と思ってミルクをあげてみたら、なんのコツもなくごくごく飲みだしました。そのときの赤ちゃんはまだ目も見えていないはずなのに、私たちの方にずっと耳を傾けてこっちを見てて。
看護師さんたちが5日間育ててくださって、そのあと迎えに行った日のことだったので、「私たちを待っててくれたんだ」「やっと会えた」と思いました。

中村:血のつながりだけで母になるのではなく、日々「私を求めてくれている」「この子が待っていてくれる」と感じることを積み重ねて親になっていくのかなと思いますね。ちょっとぐっと来てしまいました。
お子さんとの生活はいかがですか? 

 

瀬奈:大変ですけど、多分本当に普通のご家庭と何ひとつ変わらなくて。今もう4歳なんですけど、いろんなことを理解しはじめています。
子どもから「幸せをもらってるな、成長させてもらっているな」と感じる日々ですね。

 

中村:うちも男の子が3人いますが男の子はやんちゃですよね。

 

瀬奈:3人とも男の子!大変!

 

中村:神様がきっと「あなたはこの子たちを育てなさい」って言ってくれたんだろうなって思います。
不妊治療を経て、特別養子縁組でお子さんを迎えるという経験をされていますけれども、それを公表しようと思ったきっかけはなんですか?

特別養子縁組を公表した理由

瀬奈:私自身が生で舞台に立つ仕事をしています。
もし公表しないで子どもを連れているところを目撃されたら、「あのとき妊娠してなかったのになんで子どもがいるんだろう」と臆測を呼び、ネット社会の中で間違った情報が飛び交い、成長した息子が間違った情報を耳に入れたり目にしたりすることは避けたかった。
なので、仕事上公表することが一番いいだろうという思いがあって公表したんです。
公表するからにはなにかお役に立てることがあったらと思って、養子縁組を広める活動を始めたんです。

 

中村:公表されたときの周りの反応はいかがでしたか?

 

瀬奈:いろんな反応があるだろうと思って覚悟してました。
養子縁組がなかなか浸透しにくい日本ではありますが、マイナスなご意見や言葉がひとつもなかったんです。
そこにちょっと感動してしまったし、日本も受け入れつつある状況になっているのかな、と思いましたね。

 

中村:きっと、もっと変わらなきゃいけないこともいろいろあると思うんですけれど、実際に「日本のここが変わってくれないかな」と思うことはありますか?

 

瀬奈:「特別養子縁組」と聞くと、海外のセレブがよく取り上げられることが多いので、敷居が高くて裕福じゃないとできないように思われることが多いと思います。
特別養子縁組をするための基準は確かに高いと思います。人の命を預かるわけですから。でも普通に子どもを育てたいという愛情がある方だったら、越えられない壁ではないんです。
そこで、特別養子縁組というものを身近なものに感じていただけたらなと思って1年半前ぐらいにインスタグラムをはじめました。
私は華やかな仕事をさせていただいていますが、セレブのような裕福な家庭ではありません。私生活の面でも「子育てしているみなさんと一緒だよ」というところをちゃんとお見せすることで、この制度をみなさんに知ってもらうのが私の夢であり、目標です。

今一番大事にしていること

中村:今回こうやって番組でお話しいただいたことをきっかけに、いろいろな養子縁組があるということ知っていきたいなと思います。
今もお仕事や子育てとお忙しいと思うんですけど、生活の中で一番大事にしていることはなんですか?

 

瀬奈:息子の話を聞くことですね。
共働きですし、私も地方に長期で公演に行くこともあって時間が取りづらいときもあるんですけど、家にいるときは話をすること、離れた場所にいたとしても会話することは気をつけていますね。

 

中村:どんな息子さんに成長していますか?

瀬奈:とても頑固です。
いいところでもあり悪いところでもあると思うんですけど、意志が強いんです。

 

ふたり:(笑い)

 

中村:芯の強さはきっと瀬名さんに似てるんでしょうね。

 

瀬奈:面白いことに、顔も似てます。本当にみなさんと同じ普通の家庭ですね。

 

中村:すてきなお話ですね。
最後に質問させていただきます。「赤ちゃんへ最初の贈り物」、あなたは何をプレゼントしますか?

 

瀬奈:「安心してここで育っていいんだよ」、「安心して外でやんちゃしてきていいんだよ」っていう、家庭での安心感を与えたいと思います。

 

中村:すてきなお時間、ありがとうございました。

※ラジオ番組「エレビット presents 大切なあなた」をもとにwebコンテンツとして再構成しています。

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Last Updated : 2022/Feb/07 | CH-20220207-01