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出生前検査に関する厚生労働省の方針について
2021年5月14日
2021年3月31日に、出生前検査について厚生労働省より新たな見解が示されました。その内容を詳しくご紹介します。
出生前検査とは
出生前検査とは、出生前に子宮内の胎児の状態を診断する検査です。一部の病気について早期に発見できるため、出生後すぐに適切な治療ができ、胎児治療が可能なものは妊娠中から治療ができます。
■出生前検査の種類
出生前検査には、胎児の病気の可能性がわかる非確定的検査と、胎児の病気の診断を確定する確定的検査の2つに大きく分かれます。
検査の種類 | 特徴 |
非確定的検査 |
① 超音波検査(エコー検査) | • 胎児の成長や発育を確認できる • 一部の染色体異常の可能性についてわかる • 痛みがない |
② 母体血清マーカー検査 (トリプルマーカー、クアトロテスト) |
• 胎児の染色体異常(18トリソミー、21トリソミー)や神経管閉鎖障害(脳や脊髄の先天的な異常)の確率がわかる • 妊婦の採血が必要 |
③ 新型出生前診断(母体血胎児染色体検査:NIPT) | • 胎児の染色体異常(13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー)の可能性がわかる • 母体血清マーカー検査より精度が高い • 妊婦の採血が必要 |
確定的検査 |
④ 羊水検査 ⑤ 絨毛検査 |
• すべての染色体異常を診断できる • 腹部に専用の針を指す手術が必要 • 流産や破水などのリスクがある |
新型出生前診断に関する日本産婦人科学会の方針
新型出生前診断は、妊婦の採血のみで、胎児の染色体異常(13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー)の可能性がわかる検査です。簡単に検査ができますが、「陰性」「陽性」という判定は確定的なものではありません。確定には、絨毛検査や羊水検査が必要になります。
そのため、新型出生前診断の検査結果を受けて、どのような判断をすべきか迷う方も少なくありません。胎児の命や、今後の人生を左右する大きな決断を迫られることになりますが、現状ではこれらの情報を提供したり、相談できたりする遺伝カウンセリングの体制が十分整っていない状況です。
2020年8月、日本産科婦人科学会は、遺伝カウンセリングを必要とする妊婦に対して臨床遺伝学の知識を備えた専門医が遺伝カウンセリングを適切に行う体制が整うまでは、新型出生前診断を一般の産婦人科で導入すべきではないとの見解を示しました。
また、遺伝カウンセリングを適切に行う体制が整ったとしても、新型出生前診断の対象は、高齢妊娠や胎児の異常が確認された場合など客観的な理由を有する妊婦に限るべきであるという方針です。
新出生前検査を取り巻く状況
生前検査は、刻々と進化しています。2013年に新型出生前診断が導入されたほか、胎児超音波検査の精度が向上し、胎児の病気や染色体異常を発見できるようになりました。
また、胎児治療や新生児治療の高度化により、以前は助からなかった命が助かり、生存期間も長くなっています。障害者福祉サービスの充実も図られ、児童発達支援センターの整備をはじめとする施策が推進されています。
良い変化がもたらされる一方、晩婚化や出産年齢の高齢化、共働き世帯の増加などが進んでいる現状もあります。
また、インターネットの普及により、情報が簡単に入るようになったものの、信ぴょう性に欠けた情報や間違った情報が広まることも時折あります。出生前検査についても、検査を受けた後の意思決定の際に必要となる情報や相談・支援できる受け皿がなく、妊婦が苦悩するという事例も報告されています。
出生前検査に関する厚生労働省の方針
これらの状況を踏まえて、厚生労働省は出生前検査についての基本的考え方として下記の内容を示しました。
■出生前検査は、胎児の状況を正確に知り、将来の予測を立て、妊婦とパートナーの意思決定を支援することを目的とする。
■ノーマライゼーション(障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す)の理念を踏まえると、出生前検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、これを推奨することは、厳しく否定されるべきである。
■それぞれの妊婦等が出生前検査がどのような検査か正しく理解した上で、検査を受けるかどうか、受ける場合にはどの検査を選択するのか判断ができるよう、出生前検査に関する情報提供を行うことが必要である。そして、検査を受ける前に十分な説明・カウンセリングを行うことが不可欠である。
■どの出生前検査を受ける場合も、妊娠から出産までの期間を包括的に管理・支援できる知識や技能、責任を有する産婦人科専門医によって実施されるべきである。また産婦人科専門医だけでなく、検査前後の説明やカウンセリングなどの支援は小児科専門医や臨床遺伝専門医をはじめとした各領域の専門医、助産師、保健師、看護師、心理職、社会福祉関連職、ピアサポーターなど多職種の連携により行う必要がある。
出生前検査に関する妊婦等への情報提供の方針が変更に
厚生労働省は、妊婦とそのパートナーへの情報提供について「積極的に知らせる必要はない」とする方針を示していましたが、新たに下記のような考えを示しています。
「今後は、妊娠・出産に関する包括的な支援の一環として、妊婦等が正しい情報の提供を受け、適切な支援を得ながら意思決定を行っていくことができるよう、妊娠の初期段階において妊婦やそのパートナーへ誘導とならない形で、出生前検査に関する情報提供を行っていくことが適当である。」
厚生労働省の見解は、下記のリンクより詳しく見ることができます。
詳細はこちら→厚生労働省 NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書(素案)
※本記事は2021年4月9日に作成されました。
※最新の情報に関しては厚生労働省ウェブサイト等も併せてご参照ください。
※2024年1月 株式会社RJCリサーチ調べ インターネット調査 調査対象:産婦人科、産科、婦人科、生殖医療関連診療科 150名
Last Updated : 2021/May/13 | L.JP.MKT.CH.04.2021.2501