ホモシステインの悪影響

中村：ゲストご紹介いたします。川崎医科大学附属病院 産婦人科 副部長の太田邦明先生です。よろしくお願いいたします。

太田：よろしくお願いします。

中村：身体の中で葉酸が足りない状態になると、悪玉アミノ酸のホモシステインが蓄積されて、排出できなくなってしまうというお話を伺いました。不妊治療への悪影響や、妊婦や胎児、産後鬱にも影響があるという事ですよね。妊娠中本当に必要なものだったのだなと改めて思いました。また、ホモシステインがあると、妊娠以外にも影響があるという事ですよね。

太田：そうですね。ホモシステインは、悪玉のアミノ酸自体が、酸化ストレス、活性酸素を発生させて細胞を錆びさせる作用もありますし、血栓を血管内に作ります。あるいは炎症です。炎症は万病のもとなので、炎症を引き起こすということが言われています。また、色々な病気に関係していると言われています。

中村：それを聞くと、妊娠を考えている人だけではなくて、本当に子供から大人まで男女問わず飲んだ方がいいっていう事ですよね。

太田：もちろんです。

中村：日常的にはどういった不調があるのですか？ホモシステインを溜めると。

太田：ホモシステインが溜まっているなみたいな、自覚症状はないのですが、ホモシステインが溜まってくると、色々な生活習慣病や、あるいは加齢に伴って起こるような疾患が増えると言われています。

中村：具体的にはどういったものが？

太田：悪玉アミノ酸であるホモシステインなのですが、20年前に非常に有名な研究がございまして、ホモシステインが低い人は、将来的に虚血性心疾患になりにくいといったデータが出ています。この研究報告は、非常に世の中に衝撃を与えました。

中村：心疾患にも関わってくるということで、怖いですね。それ以外にも何か疾患と関わりはあるのですか？

太田：例えばホモシステインは、酸化ストレスを引き起こす意味で、すごく身体を錆びさせて、骨の質を下げることがよく知られています。これも非常に有名な論文なのですけれども、ホモシステインがいわゆる骨折のリスクファクターになります。

中村：へぇ。

太田：まだちょっと早いと思うのですけれども、歳を取ると測る骨密度。万病の元と言われている骨密度やいわゆる喫煙。喫煙よりもホモシステインの方が、骨折を高めるリスクが高いことが言われています。

中村：そうなのですか。喫煙よりも衝撃的なデータですね、それは。他にもありますか？

太田：また、日本から今年出たデータなのですけれども、60歳以上の男女1500人に登録してもらい、10年間追跡しました。登録した時は認知症がないのですが、10年追跡すると、300何人かが認知症になっていましたので、この人達が何の原因で認知症になったのかっていうのを見たところ、最初に登録した時に、ホモシステインの値が11.5以上だと、認知症になったのが2.3倍に増えていました。どうやら8くらいから徐々に認知症のリスクが上がってくるっていうのが、日本から最近出ました。しかし「8」は意外に測るといらっしゃるのです。

中村：怖い。

太田：結構、間近に迫っているというか。

中村：そうなのですね。でも、タンパク質。年寄りの方とか、特に食べた方がいいって言われていますけれど、そのタンパク質のせいで、ホモシステインが溜まっちゃうのですものね。

太田：そうですね。

中村：じゃあ、葉酸を効率よく摂ることが大事。

太田：大事ですね。

葉酸の摂取方法

中村：葉酸は、食べ物だけでは摂れないじゃないですか。そうすると、マルチビタミンの方がいいということですか？

太田：そうですね。サプリメントで摂るのが大事です。

中村：サプリメントの方が大事。食事で摂るよりも。

太田：食事で摂ると、どうしても代謝されてしまうので、摂取した分の半分ぐらいになります。一方、サプリメントで摂ったものは、85%ぐらい活用できるのです。食事だと例えば葉酸って、何㎍どのぐらい摂ったかわからないですよね。サプリメントだと書いてあるので、その方が効率良く、なおかつ、摂っている実感があると思うので、サプリメントが一番いいです。

中村：葉酸、これだけ色々な疾患に影響しているのに、日本では何だろう。妊娠中しか葉酸の話を聞かないですけれど。

太田：そうですね。どうしても日本だと、母子手帳を見て初めて葉酸の言葉が出てくるので。

中村：そうですよね。

太田：1998年ぐらいから欧米では穀類に葉酸を強制的に添加しています。国家戦略ですよね。国家戦略として、葉酸を強化していたのがありますので。まだ日本は進んでいないかと。

中村：日本人は、どうすればいいですか？

太田：日本人は葉酸を非常に使いにくい体質を持っているので。

中村：使いにくいというのは？

太田：葉酸を使いやすい遺伝子変異っていうのがありまして。大体60%ぐらいの日本人がその遺伝子変異を持っています。葉酸がたりているじゃないかって思っている日本人が、実は葉酸を使いづらいということがわかってるので、やはり葉酸を常日頃サプリメントの形で必要量を摂ることが大事かと思います。

葉酸サプリの選び方

中村：サプリメントが色々出ていますけれども、先生お勧めの葉酸サプリの選び方を教えてください。

太田：１つとしては、まずしっかり量が入っていることですね。

中村：どれぐらい入っていればいいのですか？

太田：厚生労働省の推奨では、女性であればモノグルタミン酸型葉酸つまり合成の葉酸サプリメントとして240㎍摂ってください。一方で妊活中の人、いわゆる妊娠する可能性があるような人は、640㎍摂ってくださいと言われているのと、葉酸だけでなくて、ホモシステイン。先程言った悪玉のアミノ酸をより溜めないためには、葉酸の働きを助ける他のビタミンBなどマルチビタミンが入ってるものがいいです。

中村：なるほど。妊娠中だけじゃなくて、常に摂ることがいいということですね。

太田：そうですね。もう始めたらやめられないみたいな。

中村：（笑）ある程度摂取して調子整ったから、終わりにしていいかな、じゃダメってことですか？

太田：皆さんそうなっちゃうと思うのですけれど、妊娠中もいい効果があって、産後もいい効果があって、年を取った人たちにもいい効果があるってことを考えると、むしろずっと摂取していた方がいいかと。

中村：死ぬまで続けた方がいいのですね。

太田：死ぬまで続けた方がいいのか、ちょっと分からないのですけれど（笑）

中村：（笑）なるほど。葉酸って思っていた以上に、大事なのですね。

太田：非常に身近にありそうで身近じゃないけど、身近な病気を予防してくれる面で、凄く高価でもないし、色々どこにでも売っているってことを考えると身近なので、なるべく手を出して、飲んでもらった方がいいのじゃないかと思っています。

中村：ちょっと今、大事な人達に、葉酸摂取してって、薦めようと思っています。

太田：母親にも飲ませています（笑）

中村：そうですよね。両親とか。うちの夫、喫煙するので。

太田：喫煙自体も、ホモシステインをあげます。非常に面白い中国からの新しいデータがあって、奥さんが妊娠前から元気な赤ちゃん産もうと思って、葉酸をしっかり飲んでいると。飲んでいる人たちは比較的奇形が起きないっていうのは、これまでも分かっているのですけども、今回新しく出てきたのは、旦那さんが喫煙していると、奇形を予防する効果が打ち消される事があるので、一人の赤ちゃんを妊娠から産むまでは、カップル、夫婦で協力し合って行くのが大事かなと思います。

中村：女性だけじゃなくて、二人で同じ葉酸のマルチビタミンサプリを飲めばいいって事ですね。

太田：それでも充分だと思います。

中村：あと、うちの夫が年齢も年齢で、喫煙者だから絶対に葉酸を飲んだ方がいいですね。

太田：絶対飲んだ方がいいと思います。

中村：今日からすぐ薦めます（笑）ありがとうございました。

太田：ありがとうございます。

中村：今日は川崎医科大学附属病院 産婦人科 副部長の太田邦明先生をゲストに迎えて「ホモシステインの悪影響」をテーマにお話を伺いました。参考になりました。ありがとうございました。

太田：ありがとうございました。