トップ>妊活TOP>医師による心とからだづくり講座>プレコンセプション期から産後まで、鉄や葉酸などの栄養補給を心がけて健やかな1000日を(後編):牧野真太郎 先生
鉄や葉酸に関しては過剰になる心配よりも、きちんと量が考えられているサプリメントをうまく取り入れることが重要。
― ―女性が足りていない、血液に大事な栄養素
からだの中で赤血球を作るときには、鉄や葉酸などのビタミンB群が必要不可決です。しかしながら、これらの栄養素は20代30代の日本人女性では不足しがちであることが調査でわかっています。また、ヒトは、たんぱく質の一種であるフェリチンにくっついた形の鉄を細胞内に貯蔵することができるのですが、血液中の鉄がぎりぎり足りていても、貯蔵鉄が枯渇している場合がけっこうあるんです。この仕組みは貯水ダムをイメージいただくと良いかもしれません。川は流れていてちゃんと水があるように見えてもダムが干上がっている場合があって、これは何かあった時に心もとないですよね。ダムにも川にも適量の水がある状態を目指しましょう。
― ―痩せている女性は特に気を付けて
日本では、すぐに治療が必要なほど重度の貧血の方はそこまで多くはないのですが、軽度の貧血の人を含めると20代30代日本人女性の約半数以上という調査結果があり、診療していても貧血は多い印象があります。最近の日本人女性は妊娠前から痩せている傾向にあり、またさまざまな背景から栄養状態にも問題がある方が増えています。このような方が妊娠した際には、貧血はより起こりやすくなってしまいます。栄養状態が悪い状態での妊娠は、妊娠中の貧血以外にも合併症のリスクを上げてしまいますので、適切な体重の維持と良い栄養バランスを心がけてください。
― ―プレコンセプションケアではどんな栄養をとるべき?
貧血対策として必要な栄養素というだけではなく、二分脊椎症リスク低減のために葉酸の摂取はプレコンセプションケアとして重要です。また、葉酸も単独ではなくマルチビタミンで摂った方が良いといわれていますし、栄養はバランス良く摂るこがおすすめです。また、食事での摂取では不足しやすい鉄や葉酸はサプリメントもうまく取り入れることをおすすめします。過剰症を心配してなるべくサプリメントには頼らない、検査値でひっかかったり症状が出てから対応すればよいという方がいらっしゃったりするのですが、ならないに越したことはありません。鉄や葉酸に関しては過剰になる心配よりも、きちんと量が考えられているサプリメントをうまく取り入れることが重要です。
― ―妊娠を希望されている方へ
私たち産科医は、妊娠検査薬で反応が出ましたというタイミングや妊娠の確認をしてくださいというタイミングで皆様に初めてお会いします。そこで血液検査をして貧血が判明した場合、妊娠という血液が薄くなる状態に血液が作られるサイクルの時間の問題も重なって、鉄の血液濃度を上げるのに時間がかかってしまうんです。また、貧血が見つかった際には鉄剤などで治療を行いますが、本当は妊婦さんに貧血が起らない方がハッピーですよね。こういったことを皆さんにお会いして説明し、妊娠前から貧血にならないように備えてくださいねとお話ししたいのですが、お伝えできる機会が限られることは心苦しいです。また、最近は、高齢妊娠や妊娠合併症が多くなってきています。栄養不足が重なると更に大変な妊娠になってしまうため、葉酸と鉄はマルチサプリメントで摂ることをおすすめしたいです。
― ―妊娠されている方へ
今まで日本では、妊婦さんに体重の増加を抑えるようにすごくうるさく言ってきた歴史背景があります。最近になって体重増加の目標値が少し増やされたのですが、個人的には体重自体そこまで頻繁に測る必要はあるのかなとすら疑問に思っています。なぜかと言いますと、体重を増やさないように無理やり食事制限したり、元から痩せている妊婦さんは低栄養状態の方が多いからです。お伝えしたいのは、体重ばかりを気にしないでほしいということです。妊娠しているときは、赤ちゃんのために全身の栄養状態を良く保つことが大切です。
また、バランスよく食べられないこともあると思いますので、そのようなときにはサプリメントも取り入れてみてください。マルチビタミンサプリメントとして優れたものが日本にはありますので、赤ちゃんへの先行投資、妊娠への先行投資と思ってうまく使ってもらえればより良い状態で妊娠ができますし、それは私たち産婦人科医にとっても喜ばしいことなんです。
牧野真太郎 先生プロフィール
順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属順天堂医院 産婦人科医局長を経て、順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科 教授に就任。 2013年日本産婦人科学会ボランティア賞(気仙沼市立病院勤務)、2019年順天堂大学同窓会学術奨励賞、 2020年東京産科婦人科学会 ベストレビューワー賞などを受賞。
**MAT Q4 2023 sales data based on value manufacturer’s selling price from Nicholas Hall’s global CHC sales database, DB6
※2024年1月 株式会社RJCリサーチ調べ インターネット調査 調査対象:産婦人科、産科、婦人科、生殖医療関連診療科 150名
※2024年1月 株式会社RJCリサーチ調べ インターネット調査 調査対象:産婦人科、産科、婦人科、生殖医療関連診療科 150名
Last Updated : 2023/Dec/08 | CH-20231114-01